健康食品にも注意必要だ!!

野菜ジュース!誇大広告では?


   '07年はいつになく食品の安全性等に多大な関心が寄せられた年でした。
   食品の表示偽装、賞味期限改ざんなどが新聞を賑わさない日はなかったくらい連日、次から次へと偽装や改ざんの嵐。さらに有害物質が入った歯磨き粉やドックフードなどで、中国製品のリコール。
   何度か食品の安全性について特集をしてきました。紹介した『食品の裏側』(安部司著)や『食品のカラクリ』(郡司和夫)などの本では、食品を作っている側からの添加物の恐怖を教えてもらいました。
   本当に危険で深刻な食品が堂々とスーパーで販売されていることの恐ろしさ。私たちは何が正しくて、何がおかしいのか、しっかりと見極めていかなければならない時代に生きているのでしょう。
   そんな中、「野菜ジュース」にスポットを当て、商品のコピーに惑わされない消費者を目指したいと思います。


   この野菜ジュース問題、2007年秋、各報道機関が一斉に報道したことで、みなさんもすでにご存知のことでしょう。名古屋消費生活センターが'06年から'07年にかけて、市販の野菜ジュース35銘柄を調査した結果を発表したもので、ほとんどすべての銘柄が宣伝文句に誤解を招く表現をしているとのことでした。
   国民生活センターでは数年前から、野菜ジュースさえ飲めば 1日分の野菜が摂取できるとか、野菜の代わりになるとかの誤解を招く表示は避けるように注意喚起してきたそうです。ところが需要は拡大しているのに一向にコピーの改善が見られないことから、今回の発表になったといいます。

   野菜は日常の食生活で欠かすことのできない食品群です。また、ファーストフードやコンビニ弁当などの普及で、食生活の栄養バランスの偏りが生活習慣病を促していると言われています。そんななか厚生労働省は「食生活指針」と題し、たっぷり野菜で、ビタミン、ミネラル、食物繊維を摂りましょうということを私たちに促したのです。そして、一日に摂取する野菜の目標値を 350グラムで、そのなかで緑黄色野菜は 120グラム以上摂ることを揚げました。さらにこれを「健康 21」という国民健康作りの指針に入れたのです。
   ですから企業はこぞって野菜関連の商品を開発販売。ふと気づくとコンビニの棚の一角を多種多彩な野菜ジュースが占拠していました。
 
   それらのうたい文句をここに列記してみます。
●『緑黄色野菜 150g+淡色野菜 150g。12種類の野菜。一本で1日分の野菜 300g。
     1日に必要とされる野菜 300gをこの一本にギュッと凝縮して詰めました』

      (カゴメ オールベジ)
●『30種類の野菜と果物が摂れます』
      (丸善食品 気軽にお野菜)
●『1日分のビタミン 3種と鉄分がバランス良くとれます』
      (サントリー 緑黄色野菜ありがと)
●『ビタミンC+ファイバー+カルシウム。
     1缶あたりセロリ 1/4本、ほうれん草4g、アスパラガス 1/4本』

      (キリンビバレッジ くだものやさい緑のからだ想い)
●『野菜の栄養をギュッとつめて。野菜補助食品。新鮮な野菜に含まれる栄養成分をまるごとパック』
      (アスプロ 朝の野菜)
●『1本で緑黄色野菜 100gに相当。緑黄色野菜たっぷり。緑黄色野菜の摂取目安は 1日100gです。
     充実野菜は 1本で緑黄色野菜 100g分に相当します』

      (伊藤園 充実野菜緑黄色野菜ミックス)
 
   見覚えのあるコピーたち。見ていると、どれもこれも体に良さそうで、野菜不足を補ってくれそうです。
   しかし、現実はそうではなかったのです。国民生活センターが調べた、表1「野菜系飲料及び野菜加工食品の緑黄色野菜 120gあたりの栄養成分量に対する充足率」をご覧になっていただくと一目瞭然。
 

 
   食物繊維の役割は、水溶性では血清コレステロール値や血糖値の改善など生活習慣病の予防に効果があると言われています。不溶性は便通の促進に効果があると言われています。いずれも体には不可欠な成分です。食物繊維はもっとも不足しがちな成分で、野菜摂取の低下とともに摂取量の不足が懸念されています。
   そんななか、市販の野菜ジュースの1パッケージあたりの食物繊維量は、本物の緑黄色野菜 120gに含まれる量と比べると、「カゴメ野菜ジュース」を除く他の銘柄では半分未満しか含まれていないのが分かります。
   ビタミンAに含まれるβカロチンは、抗酸化作用があり、皮膚や粘膜の状態を保つのに役立つことから肌によいと言われています。
   ジュースで見ると「気軽にお野菜」「充実野菜」「じょうずに野菜」などは効力を算出したが、他は皆無に近いものもありました。
   ビタミンCは抗酸化性を有するビタミンとして、また、壊血病の予防など多岐にわたる効果を示すビタミンです。人間の体内では合成されず、外部から摂る必要があります。
   しかし、表で見ると分かるように、ほとんどの銘柄で30%未満でした。パッケージにビタミンCの表示があった「くだものやさい」と「充実野菜」だけがかろうじて50%を超えるありさまです。
   カリウムは、エネルギー代謝や神経経路の信号伝達に必須ミネラルで、生体の細胞内における主要な陽イオン電解質です。日本人が摂取過剰といわれてるナトリウムとのバランスをとるためにも欠かせない物質です。
   これに関しては、おおむね合格点でした。
   しかし、人間の骨格や歯を形成するのに不可欠なミネラルのもとカルシウムは、「くだものやさい」以外はほとんど含まれていませんでした。緑黄色野菜はカルシウム含有率が高く、摂取が期待される食品なのに残念な結果です。
   このように、うたい文句では「一日分の野菜」と言っているのに、その実はちゃんとした野菜が持っている栄養素に達していないものがほとんどだったのです。メーカー側は、実際に使用している野菜が規定値の数字だから間違いはないと言います。例えば、すりおろしたりんごを食べるのと、ジューサーで絞った汁だけを飲むのとでは含有栄養素が違ってきます。絞った汁よりも、残ったかすの方に食物繊維やカルシウムが含まれ、汁の方にはほとんど含まれないのです。
   ですからジュースになってしまった時点でそれはもう野菜やくだものをそのまま食べたときの栄養とは大きく違ってくるのです。それを同じようにうたっていたのが間違いだったわけです。
   私たち消費者も、ビタミン剤やジュース類は補助食品だと分かっていても「これ1本で一日分の野菜」と大きく堂々と書かれてると、つい、いいかもしれないと思ってしまいます。
   朝日新聞が 1千人に調査をしたところ(有効回答 874人)「野菜が足りない」と気にしている人は7割にのぼり、そのなかの半数以上が「野菜ジュースは野菜の代わりになる」と答えています。
   普通に考えれば、口当たりのいい甘い、おいしいジュースで野菜がすべて補えることがおかしいのです。今一度、私たちは広告に踊らされない確かな目、知識が必要だと痛感したニュースでした。


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