強い胃痛の人は「活性酸素量」が多い
胃潰瘍の的確な診断と治療への応用可能に

岩井 力・岩井内科クリニック院長:毎日新聞(94-02-17)から

 

活性酸素が慢性的な胃の痛みに深く関係

 
  日本人に多い慢性的な胃の痛みに、胃粘膜の活性酸素が深く関係していることが、千葉県内の開業医の調査で分った。痛みの程度は内視鏡検査では判断がつかず、活性酸素量の測定が新しい診療法としてきたいされる。4月の日本消化器内視鏡学会などで発表する。
  調査したのは同県印旛郡印西町の岩井内科クリニック・岩井 力医師(38)。慢性胃炎に的確な治療法がないため、悩んでいる患者も多い。そこで岩井医師は活性酸素に着目。内視鏡検査で慢性胃炎と診断した500人について胃粘膜を採取。

 

 
胃痛が高頻度の人は活性酸素量が多い

 
  胃痛の程度と粘膜の活性酸素量との関係を調べた結果、胃痛が1週間に3日以上起きる
高頻度の人は、2週間に1日程度の低頻度の人に比べ約3倍の活性酸素量があった。胃液の酸性度が強いほど胃痛も強い傾向にあったが、活性酸素量が多い場合は、酸性度に関係なく強い胃痛を訴えていることがわかった。
 胃粘膜の活性酸素と胃炎との関係は、国立大蔵病院の北洞哲治・消化器科医長らの研究でも判明している。

 

 

ピロリ菌侵入に対抗する好中球が「活性酸素」を過剰産出

 
  ヘリコバクター・ピロリという細菌の感染によって、胃粘膜中の多核白血球(好中球)が活性酸素を過剰に産出し、胃粘膜を破壊し胃炎を引き起こすらしい。しかし、痛みの強さと活性酸素との関係が分ったのはこれが初めて。岩井医師は「胃粘膜組織を取らずに簡単に活性酸素を測定できるセンサーが開発されれば、慢性胃炎の的確な診断と治療が可能となるだろう」と話している。