日焼け・紫外線の恐怖
皮膚の表面にダメージ!成人病も誘発
宮地良樹・群馬大学医学部皮膚科教授:産経新聞(96-03-05)から

  少しずつ、春の足音が聞こえてきた。日差しが柔らかくなったと感じたら、日焼け対策を行う季節がきたと考えても早すぎることはない。日焼けは紫外線による炎症の一種。日々蓄積されればシミ、シワとなって皮膚の表面にダメージを与えるだけでなく、成人病を誘発する可能性もある。日焼け対策とは女性のもの、という通念はもはや常識ではない。男女問わず紫外線ケアを必要とする時代がやってきた。

 

日光浴は30分程度で十分

 
■ 紫外線にはビタミンDを生成する働きが
  「日光浴をすれば風邪をひきにくい」こんな言い伝えを信じる人が今も多い。生シイタケを日光にあてて干しシイタケにすると、ビタミンDの含有量が増えるように、紫外線にはビタミンDを生成する働きがある。このビタミンDが著しく欠乏すると、骨が柔らかくなって変形しやすくなる「くる病」になる。かつて、くる病は北海道、東北、北陸など日照時間の少ない地域の子供によく見られた。
 
■ 顔と手を30分日光に当てるだけで十分
  このため、日光浴の重要性が語られてきたが、群馬大学医学部皮膚科の宮地良樹教授によれば、例えば兵庫県神戸市内で夏、1日のビタミンDの所要量をとろうと思うなら、顔と手を30分日光に当てるだけで十分という。一方、別の統計では、主婦は、洗濯物を干す、子供の送り迎えなどで1日平均3時間は紫外線に当たっているという数字もある、と宮地教授。普通の生活をしている限り、ビタミンDが欠乏することはありえない

 

 
紫外線と光がシワとシミに悪影響

 
■ シワは「光老化」の典型的サインだ!
  宮地教授は、むしろ最近の研究では、紫外線と光の悪影響の方がクローズアップされているという。悪影響として、よく知られているのは顔のシワだ。カラスの足跡や深く刻み込まれたシワは、ほとんど顔など日光に当たる部分にしかできない。これが「光老化」の典型的サインだ。
  このシワは、加齢による生理的老化現象からできるシワとは異なる。高齢者の腹や太ももにできるシワは細かいちりめん状で、前者とは異質なものである。
 
■ シミができるのも紫外線が大いに関係
  紫外線によるシワと同じぐらい女性の心を悩ますシミも、紫外線が大いに関係する

 

 
紫外線と可視光線から「活性酸素」ができる

 
■ 活性酸素は体の多くの組織に悪影響を!
  さらに恐ろしいことには、紫外線と可視光線が結び付くと「活性酸素」を皮膚上に生み出すことがわかっている。活性酸素は、細胞膜の皮膚やDNA、タンパク質、酵素などにダメージを与える「フリーラジカル」という作用を起こす

 

 
活性酸素は多くの病気を引き起こす

 
  この結果、皮膚ガン糖尿病高血圧症肺疾患を悪化させ、アルツハイマー性老人痴呆症まで誘発することまで解明されてきた。日焼けはシワやシミの大敵であるばかりでなく、各種成人病を誘発する危険な存在なのだ。紫外線の悪影響に対する認識が深まるにつれ、様々な防衛法がうまれつつある。