激しい運動で活性酸素が大量発生
激しい運動は短命や万病のもと

大沢清二・大妻女子大教授&加藤邦彦・東京大学院理学部助手:毎日新聞(94-03-05)から

 

「運動量が多いと短命になる」のはなぜ?

 
■ 激しい運動を長期間続けると短命になる
  「激しい運動を続けると短命になることは、長期にわたって運動した人とそうではない人の平均寿命の調査や、昆虫や動物の観察からも明らかです」と、東京大学理学部・加藤邦彦さんは、次のようにな調査や研究報告を例に挙げた。
 
■ 体育系の人間は平均寿命が短くなる!
  大妻女子大教授・大澤清二さんらのグループは、体育学部を持つ国立大学卒業生で、1872年〜1981年までの死亡者で、戦死・戦病死を除く3113人を体育系、文科系、理科系に分けて、それぞれの平均寿命を算出した。その結果、平均寿命は、体育系60.6歳、文科系66.8歳、理科系66.1歳。つまり体育系は、文化・理科系に比べて6歳前後も短命だったという。
 
■ 実験用ネズミも感染症になり易く短命に
  実験用のネズミは回転かごの中で、一定時間、一定の速さで走らせて、運動負荷実験に使うことが多いが、運動させすぎると、感染症にかかりやすくなり、短命になると報告されている。
 
■ 昆虫も仕事量や行動範囲が広いと短命に
  ミツバチやハエなどの昆虫なども、仕事量や行動範囲が広いと短命になり、また野生動物の世界では、必ずといっていいほど、運動量の多い個体のほうが短命の場合が多い。

 

 
激しい運動が活性酸素を発生⇒短命をもたらす

 
  なぜ運動が寿命を縮めるのか。加藤さんはつぎのように説明する。「要因はいくつかありますが、運動によって酸素の消費量が増えると、それにつれて『活性酸素』と呼ばれる猛毒≠フ体内での発生量が増し、これが生体を痛めつけるのです」。
  運動と活性酸素の関係について加藤さんは次のように説明する。「私達が呼吸に伴って消費する酸素の2%が活性酸素になるとみられています。また体温の上昇が活性酸素の発生率を高めます。したがって激しい運動は、大量の酸素の消費と、体温上昇による活性酸素に発生率アップという二重の問題を抱えているといえます」。以下、前掲した「《2》 活性酸素とSOD様作用食品」の中から、「スポーツと活性酸素の関係」の部分を再掲してみましょう。

スポーツと活性酸素の関係

 
@スポーツなどで、大量の酸素を消費したとき

※例えば、ふだんの呼吸で発生する活性酸素は消費する酵素の2%にすぎません。ところが、過剰なスポーツをして、うだん呼吸している酸素量の10倍を使うと、2%の10倍の大量の活性酸素がワッと発生してくることになります。

A血流の流れが、一時的に途絶えて(虚血)、再び元どおりに流れるとき(再還流)
※虚血・再還流は、スポーツでも起こります。走る、投げる、飛ぶといった激しい動作は、筋肉に血液を集中させ、消化器や生殖器などの臓器に血液が行かなくなる虚血状態を生み出し、スポーツを終えた後にその血液が臓器に再還流します。これは大量の活性酸素を発生し、臓器などに障害をもたらす恐れがあります。