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がん、縮小効果と
延命効果は大違い

 
最後に、昔は欧米のがんの専門医もどんどん抗がん剤を使っていました。しかし、8年前からは患者の家族がやってくれといえばやるけど、もうファーストチョイスでは抗がん剤は使わなくなりました。おいしいものを食べて余生を送れと。そして、家族にははっきりいう。おたくのご主人は抗がん剤をやってもあと3ヶ月で死にますよと。日本の医者のようにやってみなければ分からない、なんてあいまいな期待を持たせることはいわない。一流の医学雑誌に8年前から抗がん剤のむなしさのことがいっぱい出ているんです。

   イギリスのアイルランドの大学にカーニー博士という人がいます。彼はヨーロッパのがん学会の重鎮で、学会で先頭を切って抗がん剤をやめろと言っている人です。その博士が生活保護を受けている患者さんを使って、薬の治験をしました。肺がんの手術をして再発した患者さん千人にメリケン粉を薬だといって飲ませる。次に同じ肺がん手術して再発した患者さん千人に、イレッサーという本物の抗がん剤を投与しました。両者がどうなるか経過を見たわけです。そうすると、メリケン粉を飲ませた患者さんはどんどんがんが大きくなってきた。あたりまえですね。

   次にイレッサーをやった千人の患者さんを見た。すると4週間以内にがんの大きさが半分になった患者さんが千人中600人いた。半分以上の人が縮小したんです。
   次にどれくらい生きたか延命効果を見ました。何もしないでいたメリケン粉群、平均5.1ヶ月で亡くなりました。抗がん剤のグループ、これは平均5.6ヶ月でした。わずか0.5ヶ月、15日の違いでした。どうしてたったの15日の違いで抗がん剤で苦しんで死ななきゃいけないのか。さらにもっと率直な疑問は、千人中600人もの人のがんが小さくなっていて、どうして死ぬのがほとんど変わらないのかということです。
   このことを覚えておいてください。いいですか、抗がん剤でがんは縮小はするけど延命にはつながらないんです。
   私は毎月、札幌から福岡まで全国の9箇所の診療所を回っています。それ以外にも臨時に沖縄や仙台にも行っています。月に一回は必ず新患の進行がんの患者さんが5人、10人と来ます。その人たちや家族を集めて今日のような話を1時間半やって納得していただいて治療を受けてもらいます。
   今日の話、みなさん分かったと思います。しかし、分かっていても、今から6年前、鹿児島の私の出張診療所で55、56歳の食道がんが肺に転移した末期のおじさんが来ました。私の話を1時間半聞いて感銘して「先生、私はもう抗がん剤、放射線はやめた。土佐清水に入院します」といって入院の予約をして帰りました。6年前の3月の19日とします。そして土佐清水の予約を3月の23日に取りました。この人、3月の20日に鹿児島大学の病院の予約もしていました。
   というのは2月の始めから抗がん剤と放射線治療をしていて、それが効いたかどうかを知るために2月の終わりにCTを撮ったんです。その結果を知るためと、もう土佐清水病院に入院するから、最後だと思って3月20日にごあいさつがてら行きました。すると内科のかかりつけの先生がレントゲンとCTの結果を持ってきた。「いやーご主人、この写真を見てごらんなさい。あれだけ大きかったがんが、2月の始めからやった抗がん剤でこれだけ小さくなりましたよ。良かったですねー。抗がん剤、続けてやりましょう!」と言ったんです。彼は土佐清水病院の入院、キャンセルしてきました。
   僕が1時間半あれだけ言ったのに、小さくなったと言われたら抗がん剤をやるんですよ。悪いけどこの人、4ヶ月くらいで亡くなりました。なんぼいうたって分からん人がいるんです。そうかというとその反対に人もいる。鹿児島の人から半年して、新横浜の診療所に55、6歳の大腸がんを手術して再発したおじさんがやってきた。
   手術をした東京の築地の癌センターの先生からは、再発したから再手術は無理、抗がん剤しかないと言われたんです。抗がん剤の効く確率は50%ですよと言われました。丹羽先生どうしましょうとやってきました。僕はこの先生を知っていたからすぐに電話しました。
   先生がおっしゃった50%は縮小効果ですか、それとも延命効果ですかと聞いたんです。そしたら、その先生「丹羽先生、だれが50%延命しますか。縮小効果に決まってますよ」というんですわ。すまり、これで分かるように、お医者さんは縮小効果でいう、患者さんは延命効果ととらえる。みなさん、この話、よく考えてがんの治療をやってください。

 

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