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活性酸素よりたちの悪い
過酸化脂質

 

    

―――活性酸素による病気が90%もあるということですが、すぐには信じられないような気がします。その仕組みを具体的にお話いただけますか。

丹羽   まず脳卒中、心筋梗塞について説明しましょう。成人病検診などで「あなたはコレステロール、中性脂肪などの脂質が高いから減らすように努力しないと中風、心筋梗塞にかかりますよ」といわれますね。しかし実はコレステロールなどの脂質がいくら大量に血液中に存在しても血液の流れには何の悪影響も与えません。ところが血液中に活性酸素が増加しますとコレステロールなどの脂質と反応して過酸化脂質という物質ができます。活性酸素は菌や異物を溶かす非常に強力なものですが、生体でできてもすぐ消失します。ところが活性酸素が脂質と結びついた過酸化脂質は、菌や異物、人体細胞に対する反応はあまり強くありませんが、腎臓から排泄されずいつまでも身体の中にとどまり、しかも組織や臓器の外側から内部に向ってじっくり浸透して細胞を傷つけ破壊していくのです。血管壁においてもその壁に付着し続いて血管の中に浸透していき血管をもりくしてしまうのです。このようなプロセスが脳の血管で起こり脳の血管が破られると脳出血になり、過酸化脂質、コレステロール、中性脂肪の蓄積で血管の内腔がつまると脳血栓となり、同様のことが心臓に栄養を送っている冠動脈に起こると心筋梗塞になるのです。要するに血液中にコレステロールなどの脂質がいくら増加していても活性酸素さえ上昇せず、過酸化脂質ができなければ血管の壁には害が及ばず、脳卒中、心筋梗塞にはならないのです。
  次に最近急激な患者数の増加とその重症化が問題になっているアトピー性皮膚炎について説明します。私が医者になった30年以上前はアトピー性皮膚炎の患者はみんな小学校に行く前に治っていました。ところがここ17、8年前からすっかり様子が変わり高校、大学さらに25歳、30歳になってもどんどん皮膚炎が悪化したり、成人後に初発する人も増え、症状も全身の皮膚が象のように厚くなった皮膚炎、また全身に深い根を持った皮疹、さらに顔・首を中心に真っ黒な色素沈着を示すような大人の重症のアトピー性皮膚炎の患者がどんどん増えてきました。しかも特定の食事によるアレルゲンに関係のない患者、アトピー体質、家族歴のない、原因のはっきりしない患者が増加してきたのです。なぜこのようなことになってきたのかといいますと、まずはアトピー体質の一番顕著な特徴は、もともと皮膚が乾燥しているために皮膚炎が悪化するのです。そこへ先ほど申しました、紫外線の増加、環境汚染物質によって発生した活性酸素がアトピー性皮膚炎の患者の皮膚、あるいは体の脂質と結合して過酸化脂質をつくり、それが皮膚最上部の角質の保湿機能を奪うために乾燥肌がますます悪化し皮膚炎が悪化するのです。
  そのほか癌は慢性刺激と遺伝子の突然変異が主原因となって発生しますから、活性酸素がその原因となることは容易に推測していただけるでしょうし、そのほか糖尿病、肝炎、腎炎、一般の炎症、膠原病、肺硬化症、潰瘍、パーキンソン氏病、男性不妊症、ベーチェット病、川崎病などが活性酸素によって惹き起こされることが、私の研究、内外の研究者によって明らかにされているのです。
 

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